エレガントでふくよかな甘みを強く感じるセレクション・グラン・ノーブル
アルザスを代表する名門ドメーヌ・ヴァインバックが手がける、極甘口ワインの最高峰のひとつが、この「Riesling Schlossberg Quintessence de Grains Nobles Cuvée d’Or」です。使用されるのは、アルザスで最初にグラン・クリュに認定された歴史的銘醸畑シュロスベルグ(Schlossberg)のリースリング。その中でも、自然条件が完璧に揃った年にのみ成立する、極めて希少な貴腐ぶどう(Sélection de Grains Nobles)だけを用いて造られます。
シュロスベルグは花崗岩を主体とした急斜面の畑で、優れた水はけと日照条件を備え、リースリングに鋭い酸と透明感のあるミネラルを与えることで知られています。ヴァインバックはこの畑における最大の所有者のひとつであり、長年にわたる経験から、貴腐が理想的に進む区画とタイミングを見極めて収穫を行います。しかしSGNは毎年造れるものではなく、さらに本キュヴェはその中でも最良の果実のみを選び抜くため、生産量はごくわずか。市場に出回る本数は極めて限定的です。
グラスに注ぐと、輝きのある濃い黄金色。香りは非常に複雑で、蜂蜜、白桃や黄桃のコンポート、柑橘のマーマレード、熟した洋梨、そこにリースリング特有のレモンピールや白い花、火打石のようなミネラルのニュアンスが重なります。口に含むと、圧倒的な凝縮感を持つ甘さが広がりながらも、シュロスベルグ由来の張りのある酸が全体を引き締め、重さを感じさせません。甘味・酸・ミネラルが完璧な均衡を保ち、余韻は驚くほど長く、透明感を保ったまま静かに続いていきます。
このワインは、リースリングSGNの中でも特に熟成能力に優れた存在で、数十年単位での長期熟成が可能とされています。時間とともに、蜂蜜やドライフルーツのニュアンスに加え、スパイスやトリュフ、紅茶のような複雑な香りへと進化していきます。
フォアグラやブルーチーズとの相性は言うまでもなく、食後に少量ずつ味わう“メディテーションワイン”としても最上級。
リースリングという品種の気品、シュロスベルグという偉大なテロワール、そしてSGNという特別な製法が結実した、アルザス甘口ワインの頂点とも言えるキュヴェです。
Weinbach (ヴァインバック)
ドメーヌの歴史は1612年、カプチン派修道士たちがこの地に修道院を築き、ぶどうを育て始めたことに始まります。彼らは自然と向き合いながら、土地の個性を生かすワイン造りを行ってきました。その精神は時代を超えて受け継がれ、1898年にファレール家がこの地を取得して以降、現在に至るまで一貫して守られています。
20世紀後半には、当主テオ・ファレールのもとで品質が飛躍的に向上し、ヴァインバックは「アルザス最高峰の造り手」のひとつとして世界的な評価を確立しました。現在は、娘のカトリーヌを中心に次世代へと受け継がれ、伝統と革新を両立したワイン造りが続けられています。
ヴァインバックの最大の特徴は、「テロワールをそのままグラスに映す」という明確な哲学です。畑では1990年代から有機栽培を取り入れ、2005年以降はすべての畑でビオディナミ農法を実践。土壌の生命力を高め、ぶどう本来の力を最大限に引き出すことを重視しています。収穫はすべて手摘みで行われ、完熟したぶどうだけを厳しく選別します。
醸造においても、人の手は必要最小限。天然酵母による発酵、アルザス伝統の大樽での長期熟成により、果実味だけでなく、土地由来のミネラル感や奥行きのある味わいが生まれます。派手さではなく、静かで深い余韻を大切にするスタイルは、料理との相性の良さでも高く評価されています。
所有する畑には、アルザスを代表するグラン・クリュシュロスベルグをはじめ、修道士の時代から受け継がれる単独所有畑クロ・デ・カプサンなど、特別な区画が含まれます。これらの畑から生まれるリースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールは、それぞれの土壌や微気候の違いを明確に映し出し、飲み手に産地の個性をはっきりと伝えてくれます。
ドメーヌ・ヴァインバックのワインは、決して大量生産されるものではありません。しかしその一本一本には、400年以上続く歴史、土地への敬意、そして家族の情熱が詰まっています。アルザスワインの本質を知りたい方、食事とともにじっくり味わえるワインを求める方にこそ、手に取っていただきたい生産者です。
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