パワフルで余韻が長く、まろやかさが加わった唯一無二のコートロティのスタイル
コート・ロティは、コート・デュ・ローヌ地方の中でも最北端に位置しています。また大都市リヨンのすぐ南で、ローヌ川に面しています。コート・デュ・ローヌ北部はシラーの銘醸地として知られていますが、中でもコート・ロティはその中でもトップクラスのワインを生み出している銘醸地です。
コート・ロティとは、「ローストされたように熱い丘」という意味。温暖な大陸気候に属し、太陽の光をたっぷりと浴びる様にぶどうを栽培できる環境にあります。マルタン・クレールが手掛けるコート・ロティの特徴としては、シラー種というぶどう本来が持つ香り高さと、パワー、そして余韻長さという、コートロティの根底的なニュアンスがありますが、それに加えて、このワインにはパワフルな印象の中に一定のまろやかさがあります。
これは「野性的で力強い」というコートロティの基本的なスタイルに、クレール氏の個性が加わった、まさに独特で唯一無二のコートロティのスタイル。
このあたりに、「マルタン・クレールのワイン」の面白味、ついてはワインの奥深さ、幅広さがゆえの面白さを感じます。
Martin Clerc (マルタン・クレール)
マルタン・クレールは、フランス・ローヌ北部、コート・ロティの南側に位置するシャナ=ランバラン村に拠点を置く家族経営のワイナリーです。銘醸地コート・ロティやコンドリューといった名だたるアペラシオンを中心に、IGPコリーヌ・ロダニエンヌも含めた幅広いレンジのワインを手がけています。
このドメーヌは1990年にルイ・クレールによって設立されました。創業当初から「テロワールの個性を最大限に表現すること」を重視し、小規模ながらも丁寧な畑仕事を積み重ねてきました。現在は息子であるマルタン・クレールが当主としてドメーヌを率い、父から受け継いだ哲学を継承しながら、現代的な感性も取り入れたワイン造りを行っています。
マルタンはボーヌで醸造学を学び、さらにオーストラリアでの研修を経て経験を積んだ後、2018年に正式にドメーヌを継承しました。海外で得た知見を活かしつつも、あくまで軸にあるのはローヌ北部の伝統的なスタイルです。果実の純粋さとテロワールの表現を重視する姿勢は一貫しており、「ワインは畑で造られる」という信念のもと、ブドウ栽培に最も力を注いでいます。
現在の所有畑は約8〜10ヘクタールと小規模ながら、コート・ロティ、コンドリュー、そしてコリーヌ・ロダニエンヌといった多様な区画を所有しています。特にコート・ロティの畑は急斜面に位置し、多くが機械化できないため、ほぼすべての作業が手作業で行われています。こうした労力を惜しまない栽培こそが、凝縮感と繊細さを兼ね備えたワインを生み出す要因となっています。
栽培においては「リュット・レゾネ(減農薬農法)」を採用し、環境への配慮と品質の両立を図っています。さらにHVE(環境価値重視認証)も取得しており、持続可能なワイン造りへの取り組みを明確にしています。土壌や自然環境を尊重しながら、健全で表現力豊かなブドウを育てることが、ドメーヌのスタイルの根幹となっています。
醸造においては、過度な介入を避け、ブドウ本来の個性を引き出すことを重視しています。手摘みで収穫されたブドウは、温度管理されたステンレスタンクを中心に発酵され、必要に応じて樽熟成を行います。抽出は穏やかに行われ、シラーの持つ果実味やスパイス、フィネスを損なわないよう細心の注意が払われています。
主要品種はシラーとヴィオニエ。シラーは主にコート・ロティやコリーヌ・ロダニエンヌで、ヴィオニエはコンドリューおよびIGPレンジで使用され、それぞれのテロワールに応じた表現がなされています。特に赤ワインは、黒系果実やスパイス、フローラルなニュアンスを備えたローヌ北部らしいスタイルで、きめ細かなタンニンとバランスの良さが特徴です。
年間生産量は約5万〜15万本と決して多くはなく、品質重視の姿勢がうかがえます。小規模ドメーヌならではのきめ細やかな管理と、家族経営ならではの一貫した哲学により、各キュヴェには明確な個性が宿っています。
マルタン・クレールのワインは、コート・ロティのような偉大なアペラシオンではそのポテンシャルと緻密さを、そしてコリーヌ・ロダニエンヌではより自由で親しみやすいスタイルを表現しています。いずれにおいても共通するのは、“飲み手に寄り添いながらもテロワールを感じさせる”という姿勢です。
クラシックなローヌ北部の魅力を現代的なバランスで表現する、注目の若手生産者。そのワインは、日常から特別なシーンまで幅広く対応し、飲む人に土地の個性と造り手の想いをしっかりと伝えてくれます。